ヴォイスをオミットしたヴァージョンを出してくれないものか
このアルバムの発売を知ったのは今年の春だったと思う。僕は基本的に「品物は、現物を見て買う」タイプなのでネット買いはあまりしない。しかしスティーヴ・コールマンの新作なのだから、これは必聴ものであるに違いない、内容を確認するまでもないと思ったので、すぐ某ウェブサイトに予約注文した。が、待てど暮らせどアルバムが発送されてこない。結局、僕が本作を初めて聴いたのは7月10日、四谷「いーぐる」で行なわれた益子博之さんの新譜特集の場において、であった。益子さんからは「今回の新作、以前よりさらにヴォイスがフィーチャーされている」とうかがっていたので、かなり身構えていたのだが、当日かかった「Beba」を聴く限りではコールマンのサックスの音色やタイシャン・ソーリーのフル稼働ドラミングが、ヴォイスより遥かに強烈な印象として残り、「ああ全体がこの調子なら、けっこう満腹感を与えてくれるアルバムになってるかもしれないな」とも思った。
家に戻ると、ようやく本作が届いていた。全曲が「Beba」のような調子だったらなあ、と思いながら再生したが、なんということだろう、曲が進むごとにヴォイスがさらに前面に出るようになり(少なくとも僕はそう感じた。ミキシングのせいかもしれない)、キビがワリイなあ、あれ今だれのCDを聴いてるんだっけ、と思わずジャケットを見返してしまう瞬間も出た。コールマンは「ヴォイスをフィーチャーしたアルバム」を作りたかったのかもしれないが、ぼくがあくまで聴きたいのは「スティーヴ・コールマン自身の音色」であり、それが満喫できないという一点において本アルバムは、個人的なスティーヴ・コールマン・フェイヴァリッツの中では最下位に属する。
脳内イコライザーを必死にかけてヴォイスの存在を隅っこに追いやるように追いやるようにしつつ聴けば、コールマンやソーリーはもちろん、ティム・オルブライトやトーマス・モーガンもすさまじいプレイをしていることが浮かび上がってくるのだが・・・。ヴォイスをオミットしたヴァージョンを配信でいいから世の中に出してくれないものか。



