いまだに「得体の知れない不良オヤジ」であり続けるコールマン
スティーヴ・コールマンがファイヴ・エレメンツと名乗るバンドを組織してから25年の歳月が流れた、という事実に、なんだかしみじみしてしまう。僕はあの当時まだ20代で、やっと自分たちの世代の「新しいジャズ」が登場した! と大喜びしていたんだよね。ジャズライフ誌でコールマンが語っていたM-baseという理論(なのかなあほんとに)は分かるようで分からなかったけど、まあとにかくかっこいいから許す、みたいな気分で。そして時は流れ、わたくしは52歳のジジイになりましたが、今年54歳になるコールマンは相変わらずクールかつしたたかなスタンスで、宮本武蔵の「五輪書」にちなんで命名したというバンドを維持している。この新作は4年ぶりの作品だけど、録音は2006年から08年にかけてのもので、その辺の悠然とした態度が長続きの秘訣なのかもしれない。
例によっての複雑きわまりないリズム構成、ひっかかりのあるメロディ・ライン、アブストラクトでクールなコールマンのソロ、といったバンドの基本的な特徴は変わらないが、今回は中国系アメリカ人であるジェン・シューのエスニックなヴォイスが大きくフィーチュアされていて、サウンドにオーガニックな人間くささを与えている。もろに「中国」というわけでもなく、ユーラシア大陸のどこであってもおかしくないようなテイストを持ち、しかしあきらかに「ヨーロッパ」や「北米」や「南米」や「アフリカ」ではない。広い意味での「アジア」を感じさせる彼女のパフォーマンスは、はっきりと好き嫌いが分かれるタイプのものだろう。僕はと言えば、これぐらいの違和感が漂った方がスリリングでおもしろいし、コールマンがまだまだ「得体の知れない不良オヤジ」であることを確認できて、なんだかうれしかったりもするのだ。
そのことは、アンサンブルの要であるタイション・ソーリーのドラミングにも言えるのだと思う。ファイヴ・エレメンツの80〜90年代の作品とこのアルバムを聴き比べてみると、なによりもドラムのプレイが圧倒的に複雑でテクニカルになっていることに唖然としてしまうはずだ。この25年の間に、ある種の「ジャズ」が「リズム」的におそろしく変化したことは誰もが知っている事実だが、80年代にそれをいち早く準備した当事者であるコールマンが、その変貌を最も端的かつ過激に体現しているドラマーを起用していることって、実に素敵だなあ、とは思いませんか?



