column / コラム
2008.12.26

益子博之のニューヨーク放浪記 2007年6月編 vol.12

oversleeping in upper west side - part 12

12:20am at Louis 649, 649 East 9th Street, NYC
Sebastian Noelle Quintet
Johannes Lauer - trombone; Donny McCaslin - tenor sax; Sebastian Noelle - electric guitar; Thomson Kneeland - bass; Dan Weiss - drums.
(no cover/1 drink minimum)





またまた大混雑の店内。どうしてこの店はこんなに人気があるんだろう? テナーを抱えたドニー・マキャズリンの顔を覗き込むと、満面の笑顔。だが、さっきのトニー・マラビーがあまりに凄かったので、このときの演奏は全く印象に残っていない。カウンターの中に例の白い犬が居ることに初めて気付いた。終演後、マキャズリンは再会をとても喜んでくれた。「いつ帰るんだい?」明日の朝さ。「仕事は何をやっているの?」まぁ、広告関係。企業や商品のパンフレットとかウェブサイトとかを作ってるんだ。「そいつは忙しそうだね。次はいつNYに来るんだい?」来年の今頃かな。また会えるのを楽しみにしてるよ。



セバスティアン・ノウルにも挨拶。さっきまで米澤恵実さんとヨステイン・グルブランドセンと会っていたことも。この人は反応薄いなぁ。だいぶアルコールが回ってきた。幸せな気分で部屋に戻る。荷物の整理、残金の勘定、パスポート、チケットの確認を済ませて、風呂に入る。ほとんど眠れそうにない。


2007年6月17日(日)

出発の準備も万端。6時近くなると手代木麻生さんのほうから声を掛けてきた。時間帯が合わずにほとんど話すこともできなかった。1回くらいは食事でもと思っていたのだが、とお互い同じような詫びの言葉。宿泊費が安く浮いたことを感謝して部屋を出る。アムステルダム・アヴェニューに出るとタクシーはすぐに捉まった。リンカーン・トンネルに近づくと、黒人の運転手は突然右にハンドルを切る。そして、人気のないガソリン・スタンドに車を止めて、車外に出てしまった。一体何をしているんだ。しばらくして戻ってきた彼に尋ねると、「さっきのヴァンプでタイヤがパンクしたかと思ったんだが、大丈夫だ」大したことではなく一安心。

財布の中身を確認すると、100ドル札の他は20ドル札が3枚しかない。しまった、昨日くずしておけば良かった。難なく空港に着くと、料金は65ドル。う〜ん、半端だ。100ドル出し、あとは20ドル札3枚しかないしかないと言うと、彼はしばらく考えた末に、「もう20ドル出してくれ、50ドル返すから」惚けた頭で計算に手間取る。そうか、チップ込みで70ドル支払う計算だ。笑顔で握手。

チェックインも簡単に済み、通路側の席をゲット。後は朝飯を喰って、水を買うだけだ。あぁ、7泊でも短いなぁ。でも、毎年来ていると音楽の変化が肌で感じられるし、また知り合いも増えたし、今回の収穫は多かったんじゃないかなぁ。久しぶりの好天が眩しい。搭乗時刻の11時まであと3時間、これで旅も終わりだ。帰ってからのことはまだ考えたくない。

<おしまい>
2008.12.26

益子博之のニューヨーク放浪記 2007年6月編 vol.11

oversleeping in upper west side - part 11

この日NYに到着予定の原田和典氏から事前に、コーネリア・ストリート・カフェが激混みになることを聞いていたので、念のため日曜に彼を含む4名分で予約を入れておいた。何度も来ている僕からすると此処はいつもガラガラなので、予約するまでもないと高を括っていたのだが、早めに着くと予約有無合わせて10人くらいが開場を待ち構えている状態だった。店員が8:40から予約有りの人からチケット販売、8:45入場開始、と告げる。僕の隣にいた小太りの男は予約無いくせに先に階段を下りて行きやがった。

既に最前列右側にはスコット・フリードランダー、左側にはアルバカーキの人がいた。スコットに挨拶すると隣にいたアジア系の女性が席を譲ってくれた。後から来た連れと日本語で話しているので、物珍しいので話しかける。年長の女性の誕生日祝いで『タイム・アウト』でレコメンドされていて低料金のジャズ・クラブに来たというのだ。逆に今日出る人は有名なのかと訊いてくる。そういう感じだとちょっと厳しい音楽かも知れませんよ、と軽く脅し、楽器を用意している4人について簡単に紹介する。

しかし、いくら待っても原田さん一行が来ない。空けておいた席に別の客を案内してきたので、予約していると主張すると、既にチケットがソールド・アウトなので未だ来ていないヤツは入れないという。間に合わなかったか、セカンド・セットには入れるのかなぁ、と心配になってくる。しかも、他のテーブルのオーダーは聞いているくせに、こちらの注文をなかなか取りに来ないのでストレスが溜まる。開演前ギリギリになってやっと来た。日曜と同じくArugula & Pear SaladとFlat Crust Pizza Provencalを頼む。こいつが美味いのだ。


9:00pm & 10:30pm at Cornelia Street Cafe, 29 Cornelia Street, NYC
Tony Malaby's APPARITIONS
Tony Malaby - tenor & soprano saxes; Drew Gress - bass; Tom Rainey - drums; John Hollenbeck - drums, percussion, melodica.
($10 cover/$7 minimum)





それにしても凄い演奏だった。トニー・マラビーは異なる編成で何度も見ているが、はっきり言って今までで最高。1曲目はCDに入っているThe Mestizo Suiteだったのだが、同じ曲とは思えないほどの変わり様。フリー・フォームからスタート、ジョン・ホレンベックが様々なガラクタで触覚的なテクスチュアを感じさせるノイズを発すると、マラビーはソプラノで今まで聴いたこともないようなハード・ブロウ。テナーに持ち替え、テーマを吹き出したところで初めて曲目が判った次第。特筆すべきは、ホレンベックのハチャメチャぶり。ドラムの上に次から次へとメロディカ、グロッケン、木琴等を取り出したかと思うと、玩具のような小さなラジオでノイズを出したり、スティック以外の物でドラム・キットを叩いたり。しかも、それがマラビーの演奏と合っているのだ!




2曲目は新曲。これがまた意外というか、演歌的と云って良いほどの、泣きのラテン・メロディのオン・パレード。ソロのほうもあれだけメロディックで、しかも爆発するのを見たのは初めてだろう。ここ2〜3年、僕の見た限りではフリー・フォームへの傾斜を強めていただけに、これは新境地と言えそうだ。興奮しているうちに呆気なくファースト・セットは終わってしまった。

ここで半分ほどの観客が出て行く。隣の日本人二人も凄く良かったですと言いながらも、店を変えるべく退出した。原田さん達は入ってくるかな? と入り口のほうを見ていると、米澤恵実さんとヨステイン・グルブランドセンが入ってくる。やはりファースト・セットには入れなかったとのことで、何処かで時間を潰してきたらしい。マサ・カマグチがNYに居ることを伝えると、かなり驚いた様子。ヨステインは原田さんにあげたいとCDを持って来ている。だが、見る間に満席となってしまった。もしかすると飛行機が遅れているのかもしれない(案の定、5時間遅れだったとのこと)。




セカンド・セットは全て新曲、哀愁のラテン・メロディの連続に、狂乱のリズム隊。あぁ、このメンバーでCD出さないかなぁ、っていうか、このライヴを出してくれ。米澤さんは初めて見るホレンベックに目が釘付けになってしまったと言う。またもやあっという間にセカンド・セット終了。う〜ん、凄すぎる。

終演後、ヨステインにどんな音楽を聴いているのか尋ねられる。好きなミュージシャンをいろいろ挙げると、良く知っているなと感心される。逆に、米澤さんがあまりに知らないので、おまえなぁ、と軽く頭を叩くジェスチュア。二人とも原田さんに会えなかったのを残念がっている。CDを必ず渡すと約束。この後も何か見るんでしょう? と米澤さん。ルイースでセバスティアン・ノウルと言うと、二人とも知り合いだという。世間は狭い。スコットにも再会を約し、マラビーに新曲は全部良かったと伝えて店を出た。幾分、いや、かなり名残惜しい。
2008.12.26

益子博之のニューヨーク放浪記 2007年6月編 vol.10

oversleeping in upper west side - part 10

1:00am at Dizzy's Club Coca-Cola, 33 West 60th Street, NYC
Lucian Ban/Abraham Burton
Abraham Burton - tenor sax; Lucian Ban - piano.
($10 cover/$5 minimum@bar)


アフター・アワーズなので、難なく入れる。客席は6分の入りといったところか。居残っている人もいれば、後から入ってきた人もいる。壁沿いのバーにいるのは僕を含めて僅か数人だ。赤ワインとチーズ・プレートを頼む。若い店員に、フラッシュ焚かないから写真撮っても良いかと訊くと、快くOKの返事が返ってきた。



エイブラハム・バートンはジャッキー・マクリーン門下生だが、テナーを持つと完全なコルトレーン・スタイルになる。しっとりとしたバラードが続くが、ソロでは時折、青白い炎を思わせるブロウを聴かせる。曲目は思い出せない。高揚した気分をクール・ダウンさせるには丁度良い音楽かもしれない。いつの間にか客席にシェイマス・ブレイクの姿が。食事をしながら熱心に耳を傾けている。



終演後、ブレイクに声を掛ける。昨夜のショウを見たんだけど、とても良かった。東京でミンガス・ビッグバンドやボリス・コズロフ・トリオも見ているんだ。「そうか。東京は凄く好きな街なんだ。また行きたいなぁ。来年には行けると思うんだけど」myspace.com上では友達なんだぜ。「あぁ、アレを管理しているのは僕じゃないんだ。3,000人も登録しているからね、自分でやってたら5分おきにログインしなくちゃいけないだろ? 今度は直接メッセージを送ってくれよ」OK。ボリスに聞いたんだけど、ロックのアルバムを録音したんだって?「あぁ、自分のレーベルからもうじき出す予定だ。ロックとジャズと両方を聴いて初めてシェイマス・ブレイクの全貌が解るんだ」楽しみにしてるよ。それじゃ、次は東京で。酔い覚ましにアパートまでの9ブロックを歩いて帰った。涼しい夜風が心地良い。


2007年6月16日(土)

もう最終日。今回はまだ行っていないのでコリアン・タウンのGahm Mi OakでSul Long Tangと山盛りのキムチ。バーンズ&ノーブルのスターバックスで一服してから、昨日は入れなかったホイットニー・アメリカン・アート美術館へ行くことにして、セントラル・パークを昨日とは異なるコースで横断。う〜ん、この公園はとても広大だ。企画展示は "Summer of Love: Art of the Psychedelic Era"。1965〜70年当時を思い起こさせる展示がてんこ盛りで、この展示のことは全く知らずに来たので、ちょっと儲けた気分。壁一面を占拠したフィルモア・イースト/ウェストのライヴ告知ポスター群やジミ・ヘンドリクスが描いたとされる水彩の抽象画など、じっくり見ていて飽きない。圧巻だったのは、マイルズ・デイヴィス『ライヴ・イーヴル』などのアートワークで有名なAbdul Mati Klarweinの作品群で一つの空間を構成した "Views of Aleph Sanctuary" 。この絵の世界をこれだけの物量で見せつけられるとかなり強烈。

ロックフェラー・プラザにあるスイス製チョコレート店Teuscher Chocolatesで会社用のお土産にAssorted Trufflesを買い込む。これで義務は果たしたので一安心。チャイナ・タウンまで一気に下って、Great NY NoodletownでRoasted Duck and Wanton Noodleに中国野菜の蒸し物。これで夜のショウまでゆっくりできる、と気を抜いたのが祟ったか、1週間分のメトロ・カードを紛失しているのに気付く。どうせ深夜になったら使えないんだし、と諦めて1日フリーのカードを買い直す。


7:00pm at Arthur's Tavern, 57 Grove Street, NYC
Eri Yamamoto Trio
Eri Yamamoto - piano; Masa Kamaguchi - bass; Ikuo Takeuchi - drums.
(no cover/1 drink minimum)


今夜のコーネリア・ストリート・カフェでは音楽に集中したいので、夕食も兼ねてウィリアム・パーカー "Luc's Lantern"で弾いていたピアニストを見ておこうと、初めて此処に足を踏み入れる。しかし、食事のメニューは一切無い、場末のバーのような雰囲気の店で、すっかり"タヴァーン"の店名に騙された気分になる。一段高いバンド・スタンドを取り囲む形でバー・カウンターがあるという、不思議な造作の店だ。



程なく登場したトリオは全員日本人にもかかわらず、白人やらラテン系やら固定ファンが何人も来ているので吃驚。こうした店には珍しく、オリジナルばかりで、ちょっと70年代初頭のキース・ジャレットを思い起こさせるフォーク調というか、牧歌的な曲想は悪くない。ガンガン弾きまくるではない、丁寧な演奏に好感を持った。ベースはスペインから2週間だけ来ているマサ・カマグチとのMC。重なる偶然に何やら感慨深い。



この店も寄付制で、集金用の大きな瓶がカウンターに置いてある。僕の席からだと、ちょうど瓶の向こう側に山本がいるという位置になり、写真では居るのか居ないのか判らないような構図になってしまった。

ファースト・セット後、日本人客は珍しいのか、山本恵理のほうから近づいてきた。ウィリアム・パーカーのアルバムに参加しているのは知っているが、まだ聴いていない、でも今日の演奏は良かったと伝える。ウィリアム・パーカーの次のCDでもフィーチュアされているらしい。秋には日本ツアーがあるというので、そのときにまた会いましょうと別れる。
2008.12.26

益子博之のニューヨーク放浪記 2007年6月編 vol.09

oversleeping in upper west side - part 9

2007年6月15日(金)

三度、Bo Kyへ。Country Duck on Riceに野菜炒め。そして、バーンズ&ノーブルのスターバックスとお定まりのコース。相変わらず涼しいし、折角近いのだからセントラル・パークを散歩してイースト・サイドの美術館巡りでもしようと決心。実際の広さがどうだかは判らないが、こんなに緑が豊かで広い公園は東京にはないよなぁ。小一時間ブラブラしてイースト・サイドに辿り着く。ところが、目当てのホイットニー・アメリカン・アート美術館、普段は11時オープンなのだが、金曜日だけ13時オープンだという。ダメじゃん。気を取り直して先日諦めたMoMAに足を向ける。

メインの企画展は、リチャード・セラの巨大彫刻群。中庭まで占拠している。しかし、いつも此処で面白いと思うのは建築とデザインのフロアだ。永らくフェラーリが置かれていた場所は、ジャグアEタイプに取って代わられていた。それにしても、この時代のクルマのデザインは美しい。

そういえば今回はイタリア料理を一回も食べていなかった。去年なかなか良かったグリニッチ・ヴィレッジはユニヴァーシティ・プレイスの外れにある ローマ料理店Lupaに行く。安いランチでも20〜30ドルするので安い店ではない。Radichio with AnchovyとChitarra con Prosciutto Crudoをオーダー。しかし、アンチョビも生ハムも塩辛いだけで味わいも何もない。撃沈。去年食べたSauteed BroccoliとFusilli con Trippa Alla Romanaは旨かったのにぃ。

はてさて、今回は今日明日がメイン。万全の体制を取るべく、部屋に戻って目覚まし時計を18時半にセットして横になる。結果的には目覚ましに頼らず目が覚めた。19時過ぎには部屋を出て、B列車のセヴンス・アヴェニュー駅を目指す。降りてみれば、月曜に迷った交差点のすぐ東側に出入り口はあった。なんだかなぁ。

ティー・ラウンジに到着すると例によってスコット・フリードランダーが準備中。バンド・スタンド向かって左の一段高い場所に陣取る。チキン入りのサラダを頼むとボウルに山盛りの野菜が出てくる。自分で出しておきながら妙にウケているウェイトレスは何? しばらくするとクリス・デイヴィスが来店したとのアナウンス。この辺では有名人なんだな。眼が合ったので互いに手を振る。今夜はジェフは一緒ではないらしい。


9:00pm & 11pm at Tea Lounge, 837 Union Street, Brooklyn
CHOURMO
Tim Berne - alto sax; David Torn - electric guitar, live sampling, effects; Tom Rainey - drums.
($5 donation/1 drink minimum)


サンプラーとペダル類の準備に余念がないデイヴィッド・トーンだが、いざ音を出そうとすると大きなハム・ノイズが発生。店員を交えて、スウィッチやツマミ類を弄ったり、電源ケーブルを交換したりしているが、一向に直る気配がない。もう開演時間の21時を回っている。呆れて脇の椅子に身体を投げ出したティム・バーンが僕に気付いて笑顔で手を振ってくる。意外に良い人なんじゃん。最前列に居た知り合いらしき人に促されて、トーンがギターのケーブルを替えると一発でノイズが止まった。なんとも呆気ない幕切れに一同苦笑。




譜面無しの完全即興。プレゼンスからクレイグ・テイボーンを除いた編成だが、コードやアンビエント・サウンドといった背景が存在しないことで、フリー度、ノイズ度、共に大幅アップ。ファースト・セットの間、トーンはほとんどギターを弾くことがなかった。サンプラーに張り付いたまま、既存のサンプリング音やギターから発したノイズ、バーンのアルト等々に只管過激な変調を加え続けている。



セットの合間、チューニング中のトーンに話しかける。CDにサインを貰いながら、実は2005年に55バーでこのバンドを聴いているんだ、というと、「あぁ、アレが全ての始まりだったんだ。このディスクでもあの時の音源を使っているよ」えぇっ? クレジットにはスタジオ録音としか書いていないけど。「そんな細かいこと、いちいち書いていないだけだよ。例えばねぇ、6曲目の "Sink" なんかがそうだ」へぇ、そうだったんだ。話は聞いてみるもんだね。話せてとても良かった。ありがとう。自分の聴いたギグがCDになっていると知り、ちょっと嬉しくなる。




セカンド・セットは、打って変わってヘヴィなギターのリフから始まった。一気に高音へ駆け上るソロ。これぞトーンのサウンドだ。続いてトム・レイニーのドラムをサンプリングして変調を掛けるシークェンスを経て、トーンとバーンとの絡みが一層激しさを増していく。クライマックスから一気に幕切れ。あっという間の1時間。編集無しのライヴ音源を出してくれないもんかな。CDではトーンの編集で、激しいインタープレイがばっさりカットされてしまっていたからだ。



僕は日曜の朝に帰るんだけど、明日は何処に行く予定なんだい? とスコットに尋ねる。「明日か...多分...コーネリア・ストリート・カフェかな」それなら僕と一緒だ。一頻りトニー・マラビー談義をして別れる。人混みが凄いので、クリスとは来年の再会を約しただけで別れた。なかなか興奮が収まらないので、ワインでも一杯やってから帰ることにする。
2008.12.26

益子博之のニューヨーク放浪記 2007年6月編 vol.08

oversleeping in upper west side - part 8

7:30pm at Dizzy's Club Coca-Cola, 33 West 60th Street, NYC
Eric Reed Quintet: TENOR MADNESS
Seamus Blake - tenor & soprano saxes; Stacy Dillard - tenor & soprano saxes; Eric Reed - piano; Marco Panascia - bass; Willie Jones III - drums.
($30 cover/$5 minimum@bar)




予約していたわけではないし、この後に食事のタイミングがないので早めに入店。予約してないんだけど、と言うと、バーのほうで良ければ、と案内される。壁沿いのバーの席は残り僅か。連日の興業ながら大した盛況ぶりだ。ハーフサイズの "Gumbo-Laya" にStrawberry and Arugula Saladを注文。此処の料理は高いだけあって味も確かだ。やがて、Artistic Administratorという肩書きのトッド・バルカンが登場、「紳士淑女の皆様、本日はご来店、誠にありがとうございます。こちらにいらっしゃいますのはゼネラル・エレクトリック御一行様、あちらには誰某の誕生日パーティ御一行様、云々」といったMCが続く。此処はやはりダウンタウンやブルックリンとは世界が違うのだ。



ステイシー・ディラードは細見の黒人で、ちょっとジョニー・グリフィンを思わせる饒舌でねちっこいタイプ。対するシェイマス・ブレイクは一回りは大きく見える体躯さながらに、野太いサウンドで悠揚迫らぬ演奏をしていたかと思うと、徐々にヒート・アップして白熱のブロウを展開していく。この勝負、贔屓目を割り引いても軍配はブレイクに上がろう。曲間には大量のジョークを交えたエリック・リードのMCが延々と続く。時間がないんだ、早く演奏しろよ。タイトルから想像されるようなコルトレーン&ロリンズ絡みの選曲は一切無く、リードのオリジナルやトニー・ウィリアムズ、ハービー・ハンコック等の曲が並んでいた。



原田和典氏から此処は撮影に厳しいと聞いていたので、周囲にスタッフがいないときを見計らってシャッターを切る。客席最後部なのでステージは遠いが、雰囲気だけは捉えられただろう。未だファースト・セットは終わらないが、次があるので1時間程で店を後にする。シェイマス・ブレイク、もうちょっと聴きたかったなぁ。


9:00pm at Village Vanguard, 178 7th Avenue South, NYC
Guillermo Klein & LOS GUACHOS
Diego Urcola - trumpet, valve trombone; Taylor Haskins - trumpet, percussion; Sandro Tomassi - trombone; Miguel Zenon - alto sax, flute; Bill McHenry - tenor & soprano saxes; Chris Cheek - baritone, tenor & soprano saxes; Guillermo Klein - piano, vocals; Ben Monder - electric guitar; Fernando Huergo - electric bass; Jeff Ballard - drums; Richard Nant - percussion, trumpet.
($25 cover/$10 minimum)




初日の帰り際に予約をしていたので、混雑した店内ながら前にほうに案内される。最前列はホントにビル・マケンリーの足下なので、2列目正面の空席に潜り込む。11人編成でこんなにギュウギュウなんだから、フル・バンドだったらどんな風になるんだろう。左手にいる日本人の若い女2人が大きな声で喋っている。トイレに立つとスーツを着たジェローム・サバーグに鉢合わせし、思わずハグ。

ギジェルモ・クレインはあまり英語が話せないようで、時折スペイン語を交えながら小さな声でボソボソ話す。彼のオリジナルはそれぞれ趣向を凝らした編曲がなされているようだが、演奏のほうはいまひとつピリッとしない。アンサンブルはルーズだし、ミゲル・セノーンが例によって垂れ流しのロング・ソロを取る一方で、ビル・マケンリーにはソロ・スペースが全くない。唯一の収穫は、クリス・チークがほとんどの曲でバリトンを吹き、ソロもバリトンだったこと。身体が大きいこともあって鳴りが良いし、どちらかといえばクールで端正なテナーに比べて、圧しの強いブロウを聴かせていた。




ヴァンガードも演奏中の撮影に関しては相当五月蝿いので、終演直後にシャッターを切ったのだが、皆そそくさと舞台を降りてしまうので全員揃った写真は撮れなかった。このショウには結構期待していたので、良ければ2セット通しで聴こうと思っていたのだが、もうこれ以上聴く気は失せてしまっていた。取り敢えず8丁目に新しくできたカシャーサという店でマヌエル・ヴァレーラでも見てみようと思い立つ。クリストファー・ストリートをそのまま東へ。55バーの前に通りかかると、今夜はウェイン・クランツが出演しているではないか。セカンド・セットから見られるなぁ、新譜も買えるだろうし。

カシャーサは丁度セットの合間だった。舞台には誰もいない。カヴァー・チャージ5ドルなので安いと思っていたのだが、テーブルには2 drink $15 minimumと書いてある。合計すると20ドルでそれほど安いわけではない。それに、ただの気の所為かも知れないが、店内には何となくラテン・コミュニティの閉鎖的な空気が漂っている気がしてならない。これならスモールズ・レコードから出たライヴが悪くなかったギラド・ヘクセルマンを聴こう、メンバーもCDと同じだし。ちょっと遠いが一昨夜に引き続き、アルファベット・シティへ向かう。


11:00pm at Louis 649, 649 East 9th Street, NYC
Gilad Hekselman Trio
Gilad Hekselman - electric guitar; Joe Martin - bass; Ari Hoenig - drums.
(no cover/1 drink minimum)




一昨夜以上の混雑ぶりに、またまた吃驚。取り敢えず地ビール。CDでは初期パット・メシーニーの影響大ながら、ややクールさが勝っているという印象を受けたが、そうした個性はあまり感じられない。う〜ん、まだまだこれから、という段階か。どちらかというと速弾きで圧しまくるタイプで、ラーゲ・ルンドよりは自己主張が強いけど。因みにこの人はイスラエル出身。アヴィシャイ・コーエン周辺を筆頭に、所謂ユダヤ系アメリカ人ではない、イスラエル出身者の増加ぶりには目を見張るものがある。さて、区切りの良いところでグリニッチ・ヴィレッジに戻るとしよう。




12:20am at 55 Bar, 55 Christopher Street, NYC
Wayne Krantz Trio
Wayne Krantz - electric guitar; Lincoln Goines - electric bass; Keith Carlock - drums.
($15 cover including 2 drink)




セカンド・セットが始まっていたが、相変わらずの人気だ。しかも、音がデカい。55バーの出演者では間違いなく一番のデカさだ。この組み合わせは初めてだが、レパートリーや演奏内容はいつもと変わらぬウェイン・クランツ流。強いて云えば、去年のポール・ソコロウより良いコンビネーションかなぁ。終演後、新譜を購入。2曲目は一昨年9月に僕が見た晩の演奏。しかも、クランツ本人が断トツで良いと評価している2曲のうちのひとつなので何となく嬉しい。あのときは矢野顕子がクリフ・アーモンドを迎えに来た、なんてこともあって個人的にも何やら思い出深い。

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