column / コラム
2009.02.03

原田和典の「女」が「優」れる時 ~告白的女優論〜 vol.01

イントロダクション・トゥ・谷村美月

最初期の谷村美月を発見してしまったのは、
髑髏ミチを知ったオールナイト上映だった。


佐藤佐吉は映画監督であり、脚本家であり、プロデューサーであり、役者であり、まあ、なんでもこなせる才能の持ち主である。「佐藤佐吉演劇祭」という催しすらある。なのにちっとも器用だとか小回りがいいとかそういう感じがしないのは、『映画芸術』の言葉をそのまま引用すれば“「ヒットしさえすりゃいいんだよ」、「観客なんてアホだから、この程度の映画を観せてりゃ喜ぶんだよ」、「泣ける純愛映画ならいいの」……そんな腐ったミカンの方程式で作られ続けるクサレ映画やオサレ映画に対し、闘いを挑んでいるからだろう。
佐藤佐吉の特集上映会が、12月に新宿で行なわれた。「ウルトラマソ刑事」、掟ポルシェ(Perfumeをいち早く評価した人物。アフリカ・バンバータとの共演歴あり。http://www.musicmine.com/roman-p/)が渋さ全開で迫る「やくざハンター」、哀川翔にハゲカツラをかぶせた「東京ゾンビ」、いかにもアメリカ的なマネキン人形を悪意たっぷりに動かす「オー!マイキー フィーバー」もすごかったが、最高なのをひとつ選ぶとしたら、断然「そんな無茶な!」だ。この映画の企画に佐藤佐吉は携わった。
4部構成のオムニバスである。ふた昔前なら「バカヤロー!」、半世紀前なら増村保造、市川崑、吉村公三郎が1話ずつ監督した「女経」を思い出してもらえばいいか。
なかでも僕の心に食い込んできたのは第1部、本田隆一(「GSワンダーランド」の監督。ゴーゴー夕張が男装をしてオルガンを弾いた、あの映画だ)が手がけた「彼女が歌う理由」。以下、展開を僕なりに走り書きする。
新宿ゴールデン街を拠点に活動しているという全裸歌手、髑髏ミチを追ったドキュメンタリー。世界平和に題材を求めたオリジナル曲を、ギターの弾き語りで実にぎこちなく聴かせるミチにとって、服を着ているか着ていないかということなど取るに足らぬことなのだろう。
やがて評判が評判を呼び、ついにテレビ局(衛星だと思う)から声がかかる。喜ぶミチ。だがテレビ局側は服を着て出演することが条件だと譲らない。
切れるミチ。「どうしてそんなことをいうんですか」。スタッフはいう。「だってそりゃー無理だよ。ピンク番組じゃないんだからさあ」
ブチ切れるミチ。「全裸がピンクだって誰が決めたんですか、それこそ偏見じゃないですか。そんな目で女性を見ているんですか!」
けっきょく、その話はとりやめとなり、ミチはブチブチに切れながら夜のゴールデン街に戻ってゆく。
それから間もなく、表参道ヒルズがオープンした。ミチはここでストリート・ライヴを計画する。平和への願いを、道行く多くのひとに伝えたいという一心で。
雨の表参道、ギターケースを地面においたミチは、さっそくステージ衣装に着替えようとする。彼女の衣装は、空気。
すぐにガードマンらしき人物が飛んでくる。撮影スタッフは大急ぎでその場を離れ、ミチだけが厳重注意を受けた。
スタッフと再び顔を合わせたミチは激怒に激怒を重ねる。なぜ逃げたのか、あまりにも無責任すぎやしないか、と。
この場面には心が揺れた。が、自分がスタッフだったらやっぱり逃げ出していただろうなあ、とも思った。
なにはともあれ、髑髏ミチを知っただけでもオールナイト上映にかけつけた甲斐があった。
あともうひとつ、この日は大きな収穫があった。『東京ゾンビ』のワン・シーンに最初期の谷村美月を発見してしまったのである。少女というよりまだ子供な谷村を。
ずいぶん回り道をしてしまったが、続きは次回!
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