益子博之のニューヨーク放浪記 2009年6月編 vol.14
lost article in downtown - part 14
Ethan Iverson & Tim Berne
Tim Berne - alto sax; Ethan Iverson - piano.
($10 cover/no drink or food)
ティム・バーンは客席で知り合いと談笑している。10分ほど待つと、イーサン・アイヴァーソンが楽屋から出て来た。空調がうるさいので冷房を切ってくれとバーン。うわっ、暑くなったらイヤだな。今日はお互いに曲を持ち寄った、民主主義だからな、とジャブを繰り出してから演奏開始。常に盛大にブレス漏れの音を発している。すぐにミネラル・ウォーターのペット・ボトルをミュート代わりに朝顔に突っ込む。去年聴いたクレイグ・テイボーンとのデュオに比べると、アイヴァーソンはとてもピアニスティック。テイボーンはかなり抽象的な演奏で、聴いていて掴み所を見失う場面が少なくなかったが、そうはならない。一方、テイボーンはあくまでピアノという”楽器の演奏”からあらゆるサウンドを導き出していたが、アイヴァーソンは椅子を揺らしたり、椅子の足を床に叩き付けたり、あるいはピアノ内部の弦を拳で叩いたりといった具合に非楽器的なアプローチを随所で見せた。
「最初の曲はイーサン作で、タイトルは、まだ付いていないんだよな?」「実はティムに内緒にしていただけで『ブルーズ』っていうタイトルがあるんだよ」この後、捻ったユーモアの応酬が続くのだが、殆ど聞き取れないし、中身にも付いて行けなかった。アクースティック・ハードセル等で聞き覚えのある旋律がいろいろ。一応5曲、1時間で終了。これもかなり良かった。隣で居眠りしていたのはDMG店主のブルース・ギャランター。またもや次まで30分しかないので、誰にも話しかけずに店を後にする。
11:30pm at 55 Bar, 55 Christopher Street, NYC
SEX MOB
Steven Bernstein - slide trumpet; Briggan Krauss - alto sax; Tony Scherr - bass; Kenny Wollesen - drums, wooden percussion.
($12 cover/2 drink minimum)
開演予定の23時半に到着すると立錐の余地も無い状況。凄い人気ぶりだ。とりあえずトイレに行って戻ると、カウンターの後ろのほうに空きを一つ見つける。15分後にメンバーが戻ってきた。スティーヴン・バーンステインは小柄で小太り、ダニー・デヴィートを髣髴させる。ファンキーなグルーヴにおどけた展開、テーマやリフ以外は只管排泄音のようなサウンドを撒き散らし続けるホーン陣、そして時折ケニー・ウォルセンがスリット・ドラムでエスニックなスパイスを振り掛けると、あっという間に猥雑な空気が充満し、さらに膨張していく。
バーンステインは2つのマイクを使い分け。右はストレートな音、左からは電子音のように変調されたサウンドが飛び出す。ウォルセンがオモチャを延々グルグル回したり、トニー・シェアがわざと音程を外してソロを取ったりして次々に笑いを巻き起こす。1時間余りのセカンド・セットは大歓声に包まれて終わりを告げた。
上司へのお土産に55バーのTシャツを購入。晩飯を食い損なったので、腹が減っている。Bleecker Street PizzaでNonna Mariaを1ピース。歩いているとちょっと物足りないので、ブリーカー・ストリートにあるPizza Boxでモッツァレラとリコッタ・チーズだけの白いピザに赤ワイン。ワインは酸っぱい安物だ。部屋に戻るとまずは荷物整理、そしてゆっくり風呂に浸かる。バス・タブが浅いので、身体を沈めると足が腿まで出てしまう。もう1週間なんてホントにあっという間だな。詰め込み過ぎのスケジュールは身から出た錆び以外の何物でもないのだが、この慌しい気分はどうにかならないのだろうか? また寝過ごしてしまうと拙いので、起きたまま7時になったらニューアーク・リバティ国際空港に向かおう。
2009年6月27日(土)
帰りの飛行機の中で寝るため、このまま眠らない。今朝は雲が多いものの青空が広がっている。6時を周ったので、Sugar Cafeでリヴェンジ。Seasonal Fruit Platter with Cottage Cheese、Double Espressoを注文。フルーツはイチゴの他はグリーンとオレンジのメロンのみ、きっと今の旬なのだろう。味は悪くないが、皿一杯同じ物を食べ続けなければならないので、半分くらいで飽きてくる。ほとんど水分だしね。
7時過ぎには宿を出る。南行きのラファイェット・ストリートまで出ると、丁度客を降ろすタクシーが止まった。白人の運転手に、ニューアーク空港まで良いかと尋ねると肯いたが降りてくる気配がない。何だよ、自分で荷物積むのかよ。カナル・ストリートを西へ。ホランド・トンネルの入り口が閉まっている。今日はツイていない。リンカーン・トンネルまで北上。トンネルの先のハイウェイは空いている。遠回りしたものの40分程で空港に到着。10ドルとチップをはずむが、結局荷物下ろしは手伝わない運転手。次から白人のタクシーには絶対乗らないぜ。
出発まで3時間。チェック・インは自分で機械に入力しなければならない。面倒だなと思っているとスーツ・ケースが重量オーヴァー。50ドルも追加料金を取られてしまった。どうせ機械相手なのだから、バカ正直に申告しないで知らん顔で通せば良かった。出発ゲートが左側の一番手前から右側の一番奥に変更になっている。遠いなぁ。出発まで残り3時間。会社向けのお土産を追加購入し、スターバックスで撮った写真を見ながらぼーっとする。1時間前になったところで、出発ゲートのほうに移動した。
ゲートでチェック・インの再確認。黒人のおばさんにグリーンのカードは無いのかと咎められる。えっ、グリーンのカードって、入国審査の書類だよな。パスポートの中を調べるが見当たらない。えぇっ、マジかよ。そんな初歩的なミスなんて。宿を出たときには確かにあったのに。あぁ、ダメだなぁ。先々週にも免許を落としたばかりだ。幸い交番に届けられていて事無きを得たのだが。探して来いと言われても落とした場所に心当たりなどない。一応スターバックスやトイレ等、立ち寄ったところは一通り見て回るがやはり無い。困ったなぁ、こんなことで帰れないのか、俺? 通路にカスタマー・サーヴィスがあったので相談してみる。ラテン系の浅黒い美女は最初怪訝な顔をしていたが、何処かに電話で確認するとゲートで書類に再記入すれば良いと教えてくれた。
ゲートに戻ると日系のおばさんが応対してくれる。今度は日本語で話せて良かった。彼女のほうが僕より慌てていて、書類を取って戻ってきたときにドアのセキュリティを解除し忘れ、アラームが止まらなくなってしまった。なんか悪いコトしちゃったなぁ。半券に名前とパスポート番号のみ記入。これで良いんですか? と訊くと、それで良いと言う。ふぅ、これで一安心。11時には無事搭乗できた。二度あることは三度ある。次はどんな大切な物を落とすのだろうか? 不安に苛まれながらの帰路であった。
<おしまい>
益子博之のニューヨーク放浪記 2009年6月編 vol.13
lost article in downtown - part 13
やはり5時過ぎにベッドに入り、目が覚めたのは8時過ぎ。相変わらず身体が動かないが、無理に起きることも無いので、ぼんやりして過ごす。雨音が聞こえる。今日はずっと雨なのだろうか? 9時を過ぎると腹が減ってきたので、今回最後の(と言っても2度目だが)Bo Kyに繰り出す。止んでいると思ったらまた降り出し、はっきりしない天気だ。

Cambodian Rice Noodle with Additional Vegetablesを注文、あれもこれも臓物だけど良いのか、と訊いてくるのだがそれが食べたくて頼んでいるのだ。塩気がやや足りないが、他は問題なし。店を出ると雨は止んでいる。会社向けのお土産購入のためにソーホーの西外れのJacques Torres Chocolateへ。荷物を置きに一旦宿に戻り、今度はcom-post周辺へのお土産に五番街はロックフェラー・プラザのスイス・チョコレート店、Teuscherに向かう。
結構歩いたし、13時を過ぎて少し腹が減ってきた。この前のBo Kyの帰りにマルベリー・ストリートで見つけたイタリア料理屋に行ってみることにする。陽が出て来たのでかなり蒸し暑い。やっとこの季節らしい陽気だ。パスタとメインの2皿で9ドル95セントとアメリカのレストランでは破格の値段が目に付いたのだ。Grotta Azzurra、「青の洞窟」という名の店は、HPによるとこの界隈で若き日を過ごしたフランク・シナトラが「one and only favorite Italian restaurant」と呼んだ行き付けの店だという。トマト・ソースにモッツァレラ、ナスが入ったPenne SorrentinaにSkirt Steak、素朴な味は悪くないし、このヴォリュームは日本のランチ事情から考えてもかなり安い。宿から近いので、また泊まることがあれば使うことになるだろう。コーヒー類が高いので、プリンス・ストリートのMcNally Jackson Booksellers Cafeでエスプレッソを飲む。2ドル13セント也。ここも安くて使い勝手が良さそうだ。
部屋に戻ると15時。夕方までゴロゴロしていよう。17時頃になっても起きているので目覚し時計を切ったのが拙かった。次に時計を見ると18時50分の表示。今日の一発目は19時スタート。しかも、ブルックリンで駅から遠い初めての場所。慌てて宿から飛び出し、6トレイン、Lトレインと乗り継いでベッドフォード・アヴェニュー駅へ。ベッドフォード・アヴェニューを南へ下り、イースト・リヴァー沿いのケント・アヴェニューへ出る。看板も何も無いので、前に人が居なければ見落とすところだった。19時半に到着したのだが、中は閑散としている。バー・カウンターのボードが目に入る。1セット目が19時45分、2セット目は20時半のスタート。なんだよ、これもルーズな人種のイヴェントなのか。仕方が無いので2階のバルコニーで始まるのを待つ。
7:30pm at Glasslands Gallery, 289 Kent Avenue, Williamsburg, Brooklyn
Tim Kuhl Group
Rick Parker - trombone; Jonathan Moritz - tenor sax; Chris Dingman - vibraphone; Ryan Mackstaller - electric guitar; Aidan Carroll - bass; Tim Kuhl - drums.
(no cover/no minimum)
このグループのことは何も知らなかったのだが、アイヴィン・オプスヴィークのユニットとどちらが先にやるのかわからなかったし、メンバーの中に一応知っている名前がいくつかあったので、試しに見ておこうという判断。45分になるとクリス・ディングマンがヴァイブのパーツを担いでやってきた。10分後にスタート。モーダル・コーダルの今風のジャズ。ギターはディストーション掛かりっぱなしでロック的なアプローチ、トロンボーンとヴァイブはオーソドックスなジャズ、そしてテナーは在籍するジ・アップと同様のフリー、とそれぞれのスタイルでソロを繋いでいく。まぁ、そんなに面白いものではない。3曲30分であっさり終了。トイレに行こうと階段を下りて来ると観客は僕を含めて10人足らず、身内ばかりという厳しい現実だ。
8:55pm at Glasslands Gallery, 289 Kent Avenue, Williamsburg, Brooklyn
Opsvik & Jennings
Aaron Jennings - electric guitar; Eivind Opsvik - bass, tiny keyboard; Rich Johnson - trumpet, laptop; Brian Drye - farfisa organ, pro one keyboard; Dave Christian - drums.
(no cover/no minimum)
予定を大幅に超過して21時近くに演奏が始まったのは、自主レーベルから3作目をリリースしたばかりのアイヴィン・オプスヴィークのフォークトロニカ・ユニット。CDではオーヴァーダブやサンプリングを多用して構築された音楽だったので、ライヴでは一体どのように演奏するのか、気になっていた。ラップトップのサンプリング音で背景を描き出す以外は生演奏。長閑で牧歌的な曲想に柔らかなトランペットの響きがぴったり合う。こういう音楽は結構好きなんだよな。こちらも3曲30分であっさり終了。倍くらいやっても良かったのに。だが、次の予定まで30分しかない。明日帰るから次に会えるのは来年だね、と伝えて元来た道を駅に向かった。
陽が落ちると涼しいので上着を羽織るが、蒸すので歩いているとすぐに暑くなってきた。Lトレインの1アヴェニュー駅からアヴェニューCと2ストリートの角まで、乗換の手間を考えると歩いたほうが早いと判断したがやはり遠い。22時過ぎにはなんとかストーンに到着。
益子博之のニューヨーク放浪記 2009年6月編 vol.12
lost article in downtown - part 12
Tom Guarna Group
Mark Turner - tenor sax; Tom Guarna - electric guitar; Donald Vega - piano; Josh Ginsburg - bass; Billy Hart - drums.
($20 cover/1 drink minimum)
スモールズに潜り込んだのは21時50分。立ち見が何人も居るくらい盛況だ。居場所が見つからないので、とりあえずトイレへの通路に移動する。アップ・テンポのオーソドックスな4ビート。マーク・ターナーとビリー・ハート以外は全く知らない連中だが、腕はしっかりしている。意中のターナーは指2本切断の事故がまるで嘘だったかのような演奏ぶり。半年足らずのリハビリでここまで回復するなんて。マイク無しで聴く生音はかなり大きい。決して太い音ではないのだが、良く通るというか浸透力のある純度の高い響きだ。ビリー・ハートも、スティックの一振り一振りの粒立ちが揃った透明感溢れるシンバル・レガート。さっき聴いたラッセル・マイズナーの荒さとは大違いだ。カウンターに空きを見つけて、そちらに移動。開演予定の21時から1時間近く経っているので、もう終盤かと思っていたが、トム・グァーナの曲紹介によればまだ2曲目。結構たっぷり聴けそうだ。
バラードに続いてミディアム・テンポのブルーズ。グァーナがMCの途中で唐突にマイケル・ジャクソンが薬物で亡くなったと告げる。どう反応して良いやら戸惑う観客。そういえば、さっきネットで癌と闘病中だったファラ・フォーセットの死亡記事を見かけたばかりだ。どちらも特に関係は無い、はずだ。この音楽とも。いや、生は常に死と繋がっているのか? いや、もしマーク・ターナーの指が元に戻らなかったとしたら? 柄にもなく哲学的なことを考えている余裕はない。22時半にファースト・セット終了。予定通りなら次のが始まっている時間だ。一駅だが1トレインに乗ろうとクリストファー・ストリート/シェリダン・スクエア駅へ。改札に入ろうとすると1週間分のメトロ・カードが見つからない。しまった。失くしちまった。多分、ストーンのトイレだ。後悔先に立たず。新しいカードを買うのももどかしいので、急ぎ足で歩くことにした。
10:40pm at The Jazz Gallery, 290 Hudson Street, NYC
Arthur Kell Quartet
Loren Stillman - alto sax; Brad Shepik - electric guitar; Arthur Kell - bass; Mark Ferber - drums.
($10 cover/no drink or food)
アーサー・ケルはアーサーズ・タヴァーンの山本恵理トリオで演奏していたベーシスト。当初はドラマーがジェラルド・クリーヴァーだというのがきっかけだったのが、今日ウェブをチェックしたらマーク・ファーバーに変更されている。まぁ、ポール・モティアンの新譜で一皮剥けたロレン・スティルマンがチェックできればいいだろう。とっくに始まっていると思ったら、丁度セカンド・セットが始まるところだった。メトロ・カード以外はラッキーが続くな。
以前は顔を真っ赤にしながら線の細い音で神経質に吹き捲るという印象だったスティルマンだが、生音でもかなり太くて押し出しの強いサウンド、それでいて決して汚れた音は発しない、例えて言えばリー・コニッツ系に成長を遂げた。見た目もかなり太ったみたいだけど。続くブラッド・シェピックのこんなに長いソロを聴くのは初めて。エフェクターはヴォリューム・ペダルくらいしか使っていないが、畳み掛けるようなフレーズの連続で緊張感を高めていく。
1時間余りで終了。これも聴いておいて良かった。トイレに行って戻ってくるとスティルマンと目が合う。「アンタ、サトシの弟だよな?」いや、違うけど。僕の名前はヒロユキ。去年、ティー・ラウンジのセバスティアン・ノエルのギグでも会っているんだけど。「そうか、それは悪かった。でも、本当にサトシの弟にそっくりなんだよ」武石 務に似ているなんて初めて言われたぞ。ティー・ラウンジでも人違いされたからな。いや、待てよ。昨夜、ジンク・バーで「ケイジ」って聞こえたのは、本当は「タケイシ」のことだったのかもしれない。アーサー・ケルにも挨拶。アーサーズ・タヴァーンで会ったの覚えてる?「あぁ、何処で会ったのかまでは思い出せなかったんだ。それじゃ、エリの友達?」本当は友達って言って良いのか判らないけど、そんなところかな。新譜CDは買えるの?「あぁ、入り口のカウンターに置いてある。今日は聴きに来てくれてありがとう。」
結構腹が減っている。0時を周っているのでイースト・ハウストン・ストリート沿いの24時間営業のダイナー、Sugar Cafeに寄ってみる。サラダとかフルーツにするか迷うが、結局Quiche with goat cheese, sun dried tomato and asparagus served with saladにした。が、これは見事な失敗。変にしょっぱいだけで美味いとは到底言えない味に半分近く残してしまう。素直に野菜か果物にしておけば良かった。一応、明日か明後日の朝食でリヴェンジしてみることにしよう。
益子博之のニューヨーク放浪記 2009年6月編 vol.11
lost article in downtown - part 11
このレポートを書いていると、どうしても終わるのが5時くらいになってしまう。だが、今日は気がつくと8時過ぎ。少しは眠れたようだ。ランチの約束があるのでそれまでは寝ているつもりだったのだが10時を周ると空腹に耐えられなくなってきた。こんな時こそ折角近所なのに時間が合わずにこれまで行く機会のなかった有名店、Cafe Gitaneに行ってみよう。今日も長袖で丁度良い涼しさ。
Granola with Raisins, Cashews, Fresh Fruit and YogurtにEspressoをダブルで注文。ボールというか、丼いっぱいの果物が運ばれてきた。周囲の女性陣の多くもこれを頼んでいる。まぁ、これだけ量があれば朝食として充分だが、ランチ前の僕にとってはちょっと多過ぎる。それと、グラノーラが硬いのなんのって。日本人は柔らかい物ばかり食べているから顎の筋肉が退化しているのだ。普段からもっと硬いものを食べたほうが良い、と決意を新たにする(こういうのって、あまり長続きはしないんだけど)。
久しぶりの青空が顔を覗かせると長袖では流石に暑い。13時45分に6アヴェニューと14ストリートの交差点にある大きな時計の下で待ち合わせたのは、ピアニストの米澤恵実さん。昨日行ったGusto Organicsにランチでリヴェンジである。Arugula SaladにPizza Caplesse、Gluten Free Penne with Spinach, Heavy Cream & Recotta Cheeseを二人でシェアする。今日のはハズレ無し。これは良い店を見つけた。ちょっと高いが次に来る時は来ることにしよう。話題は、互いの今の仕事状況や日米の不況、音楽業界の今後、共通の知人達の近況(特に今回会う機会のなかったジェフ・デイヴィスの激痩せぶりとその真相!)、ECMの動向等々について、あっという間に2時間半が経過してしまった。まだまだ話し足りないが、米澤さんは夏のプロジェクトに向けてかなり忙しいらしいので、今回はこれでお別れ。
まだ時間があるので、Fトレインでイースト・ブロードウェイ駅まで下り、先日は閉まっていたDowntown Music Galleryへ。CDを3枚購入。宿に戻ると既に17時。今日は食事を摂るタイミングが無いのだが、まだ腹は膨れたままなのでちょっと横になる。気付くと18時40分。おっと寝過ごすところだった。危ない危ない。慌てて部屋を飛び出すが、頭は朦朧としたままだ。
7:00pm at 55 Bar, 55 Christopher Street, NYC
Sean Smith Quartet
John Ellis - tenor & soprano sax; Keith Ganz - electric guitar; Sean Smith - bass; Russell Meissner - drums.
(no cover/2 drink minimum)
19時ジャストに店に着く。カヴァー・チャージ無しのアーリー・ショウによく出演しているベーシスト、ショーン・スミスのことは何も知らない。目当てはテナーのジョン・エリスとドラムスのラッセル・マイズナーの二人。アップ・テンポからスロー・バラードまで、4ビート・スウィングに乗せたわかり易いメロディ。可もなく不可もなくのアヴェレージなNYジャズ。唯一、正に目の前で聴くエリスの生音は、ブレス漏れの音も少なめなリードの厚さを感じさせるものだった。次は初めからしっかり見たいので、まだもう1曲残っているが、19時45分に店を後にする。
8:00pm at The Stone, corner of Avenue C & 2nd Street, NYC
Kermit Driscoll Quartet
Kris Davis - piano; Terrence McManus - electric & acoustic guitars, loops; Kermit Driscoll - bass; Brooke Sofferman - drums.
($10 cover/no drink or food)
20時丁度に着くと店の前でクリス・デイヴィスが誰かと話している。僕に気付くと挨拶もそこそこにハグ。「あなたが来ているって聞いていたわ」凄く早口なので、それ以上は聞き取れない。席を確保したいのですぐに中に入る。あぁ、良かった、冷房が入っている。4年前に来た時は冷房が無くて蒸し風呂の中の我慢大会のようだった。最前列にはいつものようにスコット・フリードランダーが居る。「本当に久しぶりだな」話は演奏の後で。
カーミット・ドリスコルといえば、80年代から90年代初頭にかけてビル・フリゼールのグループに在籍したベーシスト。不勉強ながらそれ以外での演奏は聴いたことが無いし、その後の動向については何の予備知識も無い。おどけたようなユーモラスな旋律と頻繁な場面転換。当時のフリゼール・グループを髣髴させるような音楽だ。だが、4人のそれぞれが異なるタイム・フィーリングで演奏するパートがあったかと思えば、静謐なメロディを耽美的かつエモーショナルに盛り上げて行くECM的な展開があったりと、徐々にドリスコルの個性が浮き彫りにされていく。予定の時間を過ぎているが、席を離れる気にはなれない。
21時半に終了。殆ど期待していなかったが、これは聴いておいて良かった。先にスコットを捕まえて予定の確認。僕はティム・バーンを聴きに明日ここに来るけど君は?「俺は明日から5日連続でコーネリア・ストリートに行くから明日は来れない」FONT Festivalか!「そう、週末はそれで、月曜はトニー・マラビーだろ、火曜は...」僕は土曜に帰るから、それより先のには行けないんだ。「土曜って、次の土曜? それじゃあ...」うん、もう会えないね。来年また会おう。少し話したかったのだが、クリスの姿を見失ってしまった。残念だが、急がないと次のを見逃してしまう。2アベニュー駅までは遠いので、タクシーに飛び乗る。ところが、ハウストン・ストリートは渋滞でなかなか進まない。なんとかラファイェット・ストリートまで来たので、渋滞が酷いからここで降ろしてくれというと、渋滞はここまでだからと運転手が言う。その言葉通りに交差点を抜けると一気にスピード・アップした。
益子博之のニューヨーク放浪記 2009年6月編 vol.10
lost article in downtown - part 10
ブライアン・ブレイドの声はCDで聴くより低くて力強く、黒人のフィーリングを少々感じさせるものだった。3曲歌うとブレイドは後ろのドラム・スツールに戻り、次々に登場するゲストを2曲ずつフィーチュアする展開に。最初は牧師でもあるブライアンの父親、ブレイディ・ブレイド・シニア、続いてエンブリーの弾き語り、ラノワのペダル・スティール、ラノワがプロデュースしたというトレイシー・ボーナムなる女性ヴォーカルと、入れ代わり立ち代わり登場するので、何やら散漫な印象ばかりが残った。
ブレイドがギターを手にして再びフロントに出て来たものの2曲で終了。何だよ、結局歌ったのはたったの5曲かよ、1時間半近くやったのに。アンコールでは本日の出演者が勢揃いし、ワン・フレーズを只管繰り返すゴスペルっぽいナンバー。まだ演奏は続いているが、終演後だと出口が混雑しそうなので、この辺で退散しよう。
10:00pm at 55 Bar, 55 Christopher Street, NYC
Adam Rogers Trio
Adam Rogers - electric guitar; Fima Ephron - electric bass; Nate Smith - drums.
($12 cover/2 drink minimum)
22時頃に到着すると、店の前に居た小太りの白人が「アンタ、ギタリストのなんとかだよなぁ?」と握手を求めてくる。いや、違うんだけど...。店内に入るとアダム・ロジャーズが2本のギターの準備に余念が無い。ネイト・スミスはその辺をウロウロしているが、フィーマ・エフロンの姿は見当たらない。という訳で、どうにも始まる気配が感じられない。結局、ファースト・セットが始まったのは30分を周った頃だった。
16ビート基調のヘヴィなリズムに複雑な変拍子のキメが随所に入ってくる。場所柄でもないのだろうが、ウェイン・クランツを髣髴させる音楽だ。クリス・クロスから何枚も出ているリーダー作とは全く違う世界。しかし、クランツのサウンドには常に息つく暇も与えてくれないような緊張感が漲っているが、ロジャーズにはそれがあまり感じられない。その一方、クランツからは全く漂って来ないブルーズ・フィーリングがしっかり横溢しているのだ。
曲によってストラトキャスターとレスポールを使い分けている。ネイト・スミスは自ら耳栓をして激しく叩き捲くる。その所為なのか、3曲やったところでエフロンが左手に負傷したため、一時中断。畳み掛けるようにハードでラウドなサウンドが続いたが、次は趣向を変えてループを使いながらフォーク調のミディアム・スロー・ナンバー。既に23時過ぎ、流石に次に間に合うか怪しくなってきたので、ドアの脇でチケットを売っていた男にセカンド・セットに戻ってくるからと告げて店を後にした。
11:30pm at Zinc Bar, 82 West 3rd Street, NYC
Jason Lindner Big Band
Duane Eubanks/Michael Rodriguez - trumpets; Rafi Malkiel - trombone, euphonium; Joe Fiedler - trombone; Yosvany Terry - alto sax, shekere; Jay Collins - tenor sax, flute, vocals; Jorge Continentino - tenor sax; Chris Karlic - baritone sax; Jason Lindner - keyboards; Mark Kelly - bass; Jusitine Brown - drums.
($10 cover /2 drink minimum)
小走りにブルー・ノートの前を通り過ぎ、移転したジンク・バーに近づいて行くと店の前に人込みが出来ている。あれっ、もう終わってしまったか? ドゥエイン・ユーバンクスが居たので、もう1セットのやるのかどうかを尋ねるとやるとの答え。2ブロック北に移転した新しい店舗は前よりかなり広くなっている。席を確保してからトイレに行って戻ろうとすると、通路に居た男に「ケイジ、お前、ケイジだよな?」と腕を捉まれる。いや、違うんだけど...。またもや人違いだ。そういえば、ディジーズでも見知らぬ若い白人にいきなり握手されたんだっけ。こう間違えられることが増えると笑って済ませられなくなる。横に居た日本人らしき女性に、あなた、日本人は皆同じ顔に見えるんでしょう? と言われて僕に謝りながら爆笑している。前の店舗もそうだったが、ここも客席が相当暗い。メンバーも戻って来ないし、なかなか始まりそうに無いムード。23時半になって漸く例のゲイっぽい店長がステージでアナウンスを始めた。
ビッグ・バンドを名乗っているが、昨夜のジョー・ロヴァーノ・テンテットよりもトロンボーンが1人多いだけの11人編成。だが、ハコが狭い所為もあると思うが、若手ばかりのアンサンブルはとてもパワフルに聞こえるし、パート毎の楽器が別々の動きをしたり、バック・リフもソロイストによっていろいろ変えたりしているので変化に富んで飽きさせない。各人のソロも上手くは無いが、アクが強くて個性的だ。ロヴァーノの洗練とは正反対の、ラテン的な熱さと泥臭さが押し寄せてくる。知らないうちに、何故か観客がコンガを叩いていたりするし。ついにはテナーのジェイ・コリンズがマイクを握り、ゴスペル風味の曲をメンバーとコール&レスポンスよろしく熱唱。最後はミディアム・テンポのブルーズ。先発はユーバンクスだが、この人は相変わらず地味だなぁ。気がつけば0時半を周っているので、そろそろ55バーに戻るとしよう。
ドアを開けると大音量が漏れ出してくる。まったく疲れを知らない野郎共だな。ロジャーズがもう1曲で終わりと言ったのだが、アンコールの声に圧されて更に1曲。ここでアンコールなんて珍しい。帰り際にドアの横を見るとアリ・ホーニグが来ていた。小腹が減ってきたので、Bleecker Street PizzaでNonna Mariaを1ピース食べたら、余計に腹が減ってきた。しかも、朝からかなり歩いたのでグッタリだ。今日こそ、ちゃんと寝付けるのだろうか?


