市野元彦トリオ2008年11月28日(金)21:00 ディスクユニオン新宿ジャズ館 |
静かに流れる水面の表情とは対照的に
川の形を変えてしまうように蠢く川底の流れ
右手にスティックを2本持ち、左手にはスティックのほかにカウベルをぶら下げ、指には金具を装着したドラマー。ベースに絡み付くように身を捩りながら、楽器のボディを唸らせるベーシスト。そして、不思議な指使いで弦を爪弾きながら、目を閉じ、虚空を見つめるギタリスト。2作目のリーダー作『Time Flows(Like Water)』(BounDEE)発売記念のインストア・ライヴに集まった20人余の観客の期待と、実際に眼にした光景と、そのサウンドの間に果たしてギャップはあったのだろうか。蜃気楼のように儚げな浮遊感を漂わすギターに対し、ベースとドラマーは思い思いに寄り添ってみたり、微妙にタイミングを訛らせたり、明からさまにビートをズラしたり、あるいはまったく異なるリズム・フィギュアを叩き出したりすることによって、静かに流れる水面の表情とは対照的に、時に流れを堰き止め、淀みを作り、川底を浸蝕し、川岸を削り、時折水飛沫を上げながら、長大な時間を通じて、川の形そのものをまったく違った相貌に変えてしまうような時間の流れをイメージさせる。まさに、Time flows like water。
初めて見た外山明のひとりポリリズム奏法にすっかり圧倒されてしまったが、一風変わったドラム・セットと、彼のアクションに観客の多くも驚いている様子だった。曲間ののんびりしたメンバーのやりとりがアット・ホームな雰囲気を醸し出していた一方、演奏自体は微妙な緊張感を孕みつつ、時にユーモアやリラクゼーションを感じさせる独特のムードに包まれていた。そのムードが一体何なのかは捉まえ切れぬまま、30分ほどの演奏時間はあっという間に終了してしまった。
市野元彦<http://www.motohikoichino.com/>


