pick up disc / 注目作クロスレビュー
2009.01.16
Disc Jacket
後藤雅洋の見解
市野元彦: Time Flows (Like Water)

BounDEE Jazz Library DDCB-13007

1. Oceanus 2. Doze Off 3. No Restrictions For Plasterer 4. Sanpoji-Ike 5. Treat 6. Hiking 7. Start 8. Remembrance 9. No Restrictions For Plasterer (closing take)

市野元彦(eg, ag, loops) 是安則克(b) 外山明(ds) 土井徳浩(cl).
recorded at Studio Dede, Tokyo on October 19-20, 2007.

従来の日本の音楽特有の演歌的湿り気が無いのはOK。
NY派とは違うオリジナリティが今後のポイントだろう。

アイルランド音楽研究者として名高い大島豊さん(2月14日に「いーぐる」で氏の出版記念イヴェントを行います)が、ブログに私の『ジャズ喫茶 リアル・ヒストリー』の素敵な書評を書いてくださった。さすがと思ったのは、自分でも気が付かなかった盲点を指摘されていることだ。「日本人ジャズマンとの交流の記述が無い」。そうだよなあ、書いてないよなあ、でも、それも致し方ない。亡くなった阿部薫との個人的な交流があったとは言え、あまり積極的にミュージシャンと付き合おうとはしなかったのだから、、、

理由がある。私が、パーカーやストーンズ、そしてオーティス・レディングのシャウト、タクシー・チームのノリや、クールなバッハ、能天気なモーツアルトが好きなのは、日本音楽特有の演歌的湿り気が無いからだ。まあ、国粋主義者に天誅されちゃいそうだが、そうなのだから仕方ない。もっとも、古来からの邦楽には興味があって、民謡、謡曲の類はまったくわかっていないけど、心惹かれるものがある。

などと言っているけれど、ホントウの理由は別にあるのかもしれない。私が音楽に求めているのは「何か知らない、別世界」的なもの、ミステリアスなもの、なのだ。つまり、私たちの日常生活からネタが透けて見えるようなものは、イマイチなんではなかろうか。阿部の音楽にしても、私には妙に情緒過多と言うか、日本人であるからこそその機微がわかってしまう歌謡曲、演歌に通じる湿度感が、世評ほどのめり込まなかった理由のような気がする。パーカーのアルトはワケがわからないから良いのだ。

さて、本題である。垢抜けしたジャケット・デザインと言い、最初の一音といい、よくよく表記を見なければ、まあ日本のジャズとは思えない。私たち団塊世代が耳にしてきた「日本人ジャズ」は、「最初の一音」はオオゲサとしても、ちょっと聴けばコリャ日本人だ、とわかることが多かった。例えば山下洋輔が注目されだした頃、日本のセシルみたいなことを言われたこともあったけれど、一度彼ら特有の日本的リズム感や発想が見えてしまうと、セシルの音楽とは本質的に別物だと言うことがわかってしまう。もっとも、だから好きだと言う人も当然いるわけで、単に私はそうではなかったということなんだろう。

では、このアルバムが日本的でないことをどう評価すべきなのだろう。私の個人的第一関門(エラそうな言い方だ)はOKと言うことだ。つまりネタが見えちゃうからどうの、とか、湿気っぽいからこうの、という綾はつけない。グローバル・スタンダード(冗談です)で聴ける。その一方で、ブラインドで聴いたら近頃のニューヨーク派(そんなものは無いとしても)的サウンド、テイストであることも確かで、じゃあオリジナリティはどうよ、ってところが今後のポイントだろう。

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