なにしろ「東宝レコードのレア盤がCDで聴ける」のだから、
プチプチ・ノイズが目立つ箇所にも文句はいえまい
東宝レコードという会社が、かつてあった。資料によると1970年に設立されたという。10年ぐらい続いたのではないだろうか。東宝所属の役者や、宝塚関連のレコードがずいぶん出ていた記憶がある。「太陽にほえろ」の初期のサウンドトラックも東宝だったし、四人囃子の『一触即発』もそうだった。このCDは、そんな東宝アーカイブスの中から、女性タレントの歌やナレーションを集めたコンピレーションだ。登場は順に青木英美、梅田智子、柏木由紀子、酒井和歌子、内藤洋子。青木と梅田については不勉強にして初めて知った。鈴木啓之氏のライナーノーツによると、青木はフォーリーブスの映画『急げ!若者』に出演しているというから僕は絶対に見ているはずなのだが、なぜか記憶にない。今も現役の女優として活動中という。梅田は『でっかい青春』や『金メダルへのターン!』等のテレビ番組で人気を博したとか。彼女も現役である。ふたりの歌はそれぞれ6曲、4曲聴けるが、曲調によって声の高さや出し方まで変えている(ように思える)のは不思議だ。歌詞に反映された主人公になりきって歌っているようにもとれるし、単に歌唱に対するヴィジョンが定まっていないだけともとれる。どちらにせよ「これが青木だ、梅田だ」というヴォーカル・スタイルを僕は嗅ぎ取れなかった。
柏木は、「坂本九の奥さん」といったほうが通りがいいか。ザ・清純派というべき歌唱を聴かせてくれる。東宝に吹き込む前はビクターに6枚のシングル盤を残しているというが、たしかにこなれたヴォーカルだ。でもこういうキャラクターには、だからこそ冒険的な楽曲を与えるべきだったのでは、と思う。4トラックとも、曲の起伏があまりにも少ないような気がする。
酒井和歌子はコロムビアにシングル盤2枚を残し、東宝に移籍。シングル1枚を吹き込んだ。「瀬戸の夕焼け」は、そのタイトルからも想像できるように小柳ルミ子「瀬戸の花嫁」のヒットにあやかったもの・・・と書きたくなるが、実はそうではない。和歌子のほうがリリースは1年も早い。だけど彼女の高いんだか低いんだかよくわからない発声には、こうしたベタな歌謡曲よりも、転調いっぱいのボサノバ風歌謡が似合うように思う。
トリをとるのは内藤洋子の“朗読”だ。彼女はコロムビアから歌のシングルも出しているが、たぶん歌唱力の拙さに自分で耐えられなかったのだろう(僕はちっともオンチだとは思わないが)、二度と歌をレコーディングすることはなかった。この4曲は、喜多嶋修と結婚した翌年の吹き込み。夫が用意したバック・トラックにのせて、ひとことひとこと噛み締めるように言葉を発している。
状態のあまり良くないアナログ盤からCD化したテイクもあるため、プチプチ・ノイズが目立つ箇所もあるが、なにしろ「東宝レコードのレア盤がCDで聴ける」のだから文句はいえまい。



