pick up disc / 注目作クロスレビュー
2010.07.06
Disc Jacket
村井康司の見解
The Claudia Quintet with Gary Versace: Royal Toast

Cuneiform Records RUNE 307

1. Crane Merit 2. Keramag Prelude 3. Keramag 4. Paterna Terra 5. Ted versus Ted 6. Armitage Shanks 7. Drew with Drew 8. Sphinx 9. Matt on Matt 10. Zurn 11. Chris and Chris 12. Royal Toast 13. "Ideal" Intro 14. "Ideal Standard" 15. American Standard 16. For Frederick Franck

John Hollenbeck (ds, per) Ted Reichman (acc) Chris Speed (cl, ts) Matt Moran (vib) Drew Gress (b) Gary Versace (p, acc)
recorded at Brooklyn Recording, Brooklyn on December 14-15, 2009.

のどかさや柔らかさを突き抜けた「怖さ」が足りない

ジョン・ホーレンベックのコンポーザー=アレンジャーとしての才能はとんでもないものがあると思う。
彼のラージ・アンサンブル作品『エターナル・インタールード』は、そのスケールの大きさ、楽曲の多彩さに感嘆してしまう傑作だ。クールでミニマルで、しかし聴き手を暴力的に音の渦巻に引き込むアグレッシヴさもたっぷり備えた複雑な味わい。僕は昨年末「いーぐる」で開かれた恒例の「今年の一押し」大会で、ためらうことなくそのアルバムを紹介したのだった。

クローディア・クインテット名義のこのアルバムは、やはりホーレンベックの作編曲家としての側面をクローズアップしたもの、と言えるだろう。おそろしく正確で切れのいい彼のドラミングも堪能できるものの、各人のソロ・パートは少なく、複雑に入り組んだアンサンブルが精緻に組み立てられていく。
おもしろいのは、アコーディオンとクラリネットが柔らかな持続音を奏で、減衰するヴァイブや金属打楽器がそれに切り込みを入れ、といった対比を、減衰系の楽器であるピアノが非常にソフトなサウンドを奏でることで包み込む、といったサウンド設計がなされていることだ。その結果、全体的な音楽のたたずまいは、楽曲の仕掛けや音使いはかなりハードであるにもかかわらず、どこかのどかでリラックスしたものに聞こえてくる。

僕がラージ・アンサンブルほどにこの作品に惹かれなかったのは、その「のどかさ」が物足りなかったから、なのだろう。ラージ・アンサンブルのサウンドにも「のどかさ」や「脱力感」は含まれているのだが、それをさらに高次のところで覆う「怖さ」みたいなものが、僕にはひしひしと感じられたのだ。それがないのは楽器編成のせいなのか、それともホーレンベックが求めている音楽がまるで違うものであるからなのか、は分からないが…。

というわけで、「けっこうおもしろいけど夢中にはなれない」というのが、今の時点での僕の感想だ。もちろん、これを生で聴けるとなれば盛り上がって行くでしょうけど。

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