この20年で淘汰されたもの その2
- 原田:
- スタンリー・ジョーダンだってやっぱり最初、すごい驚いたし。
- 後藤:
- スタンリー・ジョーダンは最初からイモだと思ったけどね。
- 原田:
- 「両手で弾いているからすごいんだ」って言われると、あ、そうなんだ、って思いましたね。よく考えたら、普通ギターって両手で弾くんですけどね。
- 村井:
- いやぁ、スタンリー・ジョーダンはやっぱりやっている音楽がおもしろくなかった、テクニック的にはすごいかもしれないけど。あれでもっとおもしろい音楽やっていればよかったけど、意外と普通だったからねー。演奏だけ聴くと。
- 後藤:
- いや、でもね、原田さんとは歳がちがうじゃない、で、あの頃の盛り上がりや今では忘れられているような話をもう少ししゃべってもらうとなんか見えてきそうな気がするんですよ。ジョージ・ウィンストンしかり、スタンリー・ジョーダンしかりで。もう少し挙げてくださいよ。
- 原田:
- 阿川泰子ですね。
- 益子:
- かなり飛びましたね。
- 村井:
- 阿川泰子は今や再評価が激しいんですよ。DJネタになっていまして。
- 原田:
- あれがジャズ・ヴォーカルというものだと思っていましたもん。
- 須藤:
- テレビの影響ですよね、『今夜は最高!』とか。
- 後藤:
- メディアってこわいよね。
- 益子:
- あっ、コルゲン・バンド。
- 須藤:
- タモリと阿川さん。
- 後藤:
- もうその辺になると僕、大人だったからさ、少し業界の内部知っていたから騙されなかったけど。
- 原田:
- リッチー・コールがチャーリー・パーカーの再来なんて書いてあるのを大真面目に読んでいたわけです。
- 後藤・村井:
- リッチー・コールねぇ、出てないですね、当たり前ですよね。
- 村井:
- 彼が出てきたのは70年代のおしまい頃ですかね?
- 後藤:
- あの人、上手いことは上手いけどね。
- 須藤:
- 今でもアルバムもちゃんと出ているし。あと、マルタさん。
- 後藤:
- いたね。あとマンハッタン・ジャズ・クインテット。
- 村井:
- マンハッタン・ジャズ・クインテットは正に80年代なんですよね、ど真ん中。
- 後藤:
- やっぱり当然入っていないよね、当たり前だけど。
- 村井:
- マンハッタン・ジャズ・クインテットはスイング・ジャーナル的な仕掛けでどんっと出てきたけど、それとは別に、本音であれはいいよね、っていうジャズ・ファンはいたのかなぁ? よく知らないんだけど。
- 後藤:
- いたよ、あれ、売れたんだもの。
- 須藤:
- あと、スティーヴ・ガッド、エディ・ゴメスのラインですよね。フュージョン・ファンが買ったんじゃないですか?
- 後藤:
- 難しいから断言できないけど、それもあるのかも。
- 須藤:
- 私はフュージョン・ファンの立場で買いました。
- 後藤:
- そういう人もいたでしょう。でも、それって意外と少数派だと思うなぁ。むしろ普通のジャズ・ファン、というか、ジャズを聴き始めた人にとっては分かり易いんですよ。マンハッタン・ジャズ・クインテットの最初のアルバム、《枯葉》でしたっけ。誰でも知っているスタンダードが入っているってことが受ける要因の一つ。それから、馴染みの曲をアドリブをあんまり入れずに崩さないでやるから、カラオケみたいでジャズ知らない人にはものすごく分かりやすいんですよね。だから必ずしもフュージョンから入ったわけではないんじゃないかと僕は思うんですよ。
- 須藤:
- 逆にだからこそ、フュージョン・ファンも取っつき易かったんじゃないかな。
- 後藤:
- ま、それはあるでしょう。で、その両方から来たから売れたんだと僕は理解しているけど。だって、音楽そのものはフュージョンじゃないんだもの。
- 須藤:
- レーベルは、パドル・ホイールでしたね。
- 村井:
- うん。川島ディレクターですよね、キング・レコード。
- 後藤:
- そういうふうに考えてみるとね、よくメディアが仕掛けてインチキなものをやってその弊害云々っていうけど、あんまり心配することないのかなっていう気がしてきたね。20年もたって、歴史の波風にさらされると…。
- 益子:
- えー、だってそんな20年も待てるか!(笑)って。
- 村井:
- でもマンハッタン・ジャズ・クインテットは今もやっているからね、恐ろしいことに! あと、アルファ・ジャズのケニー・ドリュー・トリオ『パリ北駅着、印象』ってあったじゃない。あれって80年代? あれもすごい流行ったんでしょ?
- 後藤:
- 流行っていましたよ、あれは売れた。
- 須藤:
- 同じ理由なんですかね?
- 後藤:
- そう思いますよ。まぁ、僕はね、ケニー・ドリューのものはマンハッタン・ジャズ・クインテットほど悪いとは思わないけどね。でもケニー・ドリューは企画がねぇ、あんまりでしょう。
- 村井:
- あれって、ベースがペデルセン、ドラムがアルヴィン・クイーンというちゃんとしたメンバーで、やっている曲がスタンダード。
- 後藤:
- はっきり言って、そんなに悪いもんじゃないんですよ。だけど、あの作り方はいかがなものか。
※ この原稿は2008年7月5日に都内某所で行われた座談会の模様を再構成したものです。








